contribution寄稿・コラム

「平和を望むなら、闘う覚悟を固めよ」 西村眞悟

 我が国は先日、アメリカのトランプ大統領を国賓として招いた。日米両国の関係からして当然のことである。ところが、安倍内閣と外務省が、中国の習近平主席も国賓として招く意向があるように漏れ伝わってくる。そこで、誰も言わないので当然のことを申しておく。
先ず、習近平氏に確認することがある。国賓として招くか否かの検討は、その確認をしてからだ。
 
 その第一は、かつて人民解放軍首脳が、日本も核ミサイルの攻撃対象であり、日本は人口密集地帯であるから絶滅させることができると豪語していたその日本に向けられた核ミサイルの照準を、日本から外す意思はあるのか否かだ。
かつて、あのロシアのエリティン大統領でさえ、来日したときに、「核ミサイルの照準を日本から外してきた」と言ったのだ。これに対し、迎えに出た外務省高官は、「何、今まで核ミサイルで我が日本を狙っていたのか」と、間髪入れず応じるべきであった。
 
 その第二は、我が国固有の領土である尖閣諸島の領海と接続水域への、中国公船の不法侵犯を続けるのか否かだ。
 
 その第三は、戦時状態に近い頻度に達している我が国領空に対する中国空軍機の異常接近を即刻停止するか否かだ。
 
 習近平氏が、以上の三つの照会に対してどれか一つでもノーと答えるならば、彼を国賓として招くなどもっての他で、こちらが検討する手間が省けるではないか。
それよりも、安倍内閣は、アメリカのトランプ政権と、対中認識を明確に共有したうえで、自由と民主主義を掲げる文明の名においてアメリカと協働し、核戦力を背景にした中国共産党独裁政権の、中華民族の覇権で世界を覆うという帝国主義的野望を阻止するという国家的任務を自覚しなければならない。
 
 そこで、我が国が最も警戒すべき情況が東アジアに生まれつつあることを指摘したい。
六月十六日、香港で二百万人が参加する反中国共産党デモが行われた。この大規模デモ発生のエネルギーは、中国共産党との「一国二制度」への香港人の反発だ。人口七百五十万人の香港で二百万人が反中国デモに参加した。尋常の事態ではない。
三十年前の六月に中国天安門広場で起こった天安門事件が香港で甦ったようである。さらに、この香港での「一国二制度」への反発は、中国から「一国二制度」を迫られつつ総統選挙をひかえている台湾に連動して吹き出すことは必至である。
つまり、中国の習近平主席は、トランプ大統領のアメリカから、経済的かつ軍事的な圧力を受けて経済成長率が鈍化し、香港と台湾から反中国蜂起を受け、これが国内そしてウイグルやチベットの反政府暴動に連動しかねない情況に陥りつつある。
 
 ここにおいて、我が国が最も警戒すべきことがある。それは即ち、中国が、この反中国包囲網を破綻させるために、尖閣で攻勢に出て我が国を紛争に引きずり込み、香港と台湾と中国国内を反日一色に転換させようとすることだ。これは中国の常套手段であり、かつて、中国が、突如行った毛沢東の台湾の金門馬祖への砲撃や鄧小平のベトナムへの突然の武力侵入は、総て内部の窮状から人民の目を外に転じさせる手段であった。
また、かつて、尖閣諸島に対する中国の領有権を主張する大船団が香港から尖閣に向かったこと、台湾も尖閣周辺海域の漁業権にこだわっていることを忘れてはならない。香港や台湾には、尖閣問題で反日に転換する要因があり、中国がそれを煽るために、突如武力で攻勢にでて一挙に尖閣を掌中に入れ、一石二鳥を得ようとする可能性が極めて高いのだ。
 
 中国は、現在、二ヶ月以上にわたって、公船の群れを尖閣周辺の接続海域に居座らせ、我が国の漁船を追いかけて威圧し、時に我が領海に侵入させている。さらに、その公船の群れに軍艦を加えて、我が国の領海深く侵入させて居座り、人民解放軍の便衣兵を島に上陸させて、共産党の五星紅旗、国民党(台湾)の青天白日旗そして香港の旗を掲げる事態を予想すべきである。
そのうえで中国は、香港、台湾そして中国の「同胞」の団結によって、日本軍国主義に奪われた領土を取り戻したという反日連携の成果を世界にアピールしミサイルを尖閣に設置するであろう。これ、中国共産党のお得意のプロパガンダであり侵略である。同時に、国内の目を、新しい日本との軍事紛争に転じさせて内部の反政府の動きを沈静化させようとする。
ここに至って、この動きを傍観するかのように放置すれば、我が国は貴重なシーレーンが通る領土を失い、台湾と香港は中国に飲み込まれ、東アジアの情況は一変して我が国存立の危機を招き寄せることになる。
 
 従って、我が国は覚悟を固めて、東アジアの平和の為に、この事態を断固阻止しなければならない。即ち、尖閣は、国家の存立をかけて、断固として守り抜かねばならない。
その為には、今までのように我が国の領空と領海に侵入した中国の軍用機や公船や軍艦を無傷で帰さず、断じて撃墜し撃沈しなければならない。今まで通り、無傷で帰せば、相手をエスカレートさせ、さらに露骨に侵入してくる。従って、一挙に、彼らの日本は絶対に撃たないから安全という今までの対日認識を粉砕し、領土、領海、領空を、直ちに実力で守るという断固とした覚悟を軍事的行動で示す時が来た。即ち、救国の行動が求められる時が来たのだ。
 
 十九世紀の欧州で発せられた次の警告は、現在の日本に向けられていることを自覚すべきだ。
「隣国によって一平方マイルの領土を奪われながら、膺懲の挙に出ない国は、その他の領土をも奪われてゆき、ついに領土を全く失って国家として存立することをやめてしまうであろう。そんな国民は、このような運命にしか値しないのだ。」(イエリング著「権利のための闘争」)。
 
 我が国を守るために、東シナ海の現場に赴く自衛艦の艦長そしてF15のパイロット諸官に思い起こしていただきたい。それは、日清戦争開戦劈頭の朝鮮半島西の黄海において、清国兵と武器弾薬を満載したイギリス船籍船を、断固として撃沈した巡洋艦「浪速」艦長の東郷平八郎大佐が行った「国際法に従った独断」である。