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【論説】激変する世界、問題意識のない野党

※イメージ映像

 
世界でおかしなことが続いている。
 
中国で国際刑事警察機構(ICPO)の孟宏偉前総裁が拘束されたり、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館でジャマル・ハショギ記者が殺害されたりと、独裁国家や一国の暴走行為が連日、国際ニュースで詳報されている。
 
そんな違和感の根源を考えると、2016年6月のEU離脱をめぐる英国の国民投票の辺りからではないかと思う。離脱(51.9%)が残留(48.1%)を小差で上回った結果、EUを代表する国の1つだった英国が2019年3月に脱退することになった。現在、EUとの間で離脱交渉が続いているが、それぞれの利権もあって協議は難航を極めている。
 
2016年6月にはフィリピンでドゥテルテ大統領が就任し、11月にはトランプ氏が米国大統領に当選。強権的なトップが相次ぎ誕生した。すでに独裁を敷いていた中国とロシアでも今年3月、体制強化がなされた。習近平国家主席は全人代で任期制限を撤廃する憲法改正を承認し、終身主席の地位が与えられた。プーチン露大統領は大統領選で圧勝(得票率76%)し、2024年までの事実上の独裁が約束された。
 
ベネズエラ、シリアでも独裁政権が猛威を奮っている。それまで、独裁色のイメージが薄かったトルコやカンボジアなども強権体質が露骨になってきている。
 
超大国アメリカで極端な思想の持ち主であるトランプ大統領が誕生し、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やパリ協定(気候変動対策の国際的枠組み)からの離脱に留まらず、各国との貿易協定見直しや、移民入国を取り締まる政策を相次ぎ実施し、自身の支持基盤に対する大衆迎合主義を鮮明にした保護主義を推し進めたことで、世界のナショナリズムの流れが加速することになった。
 
10月20日には、ロシアとの中距離核戦力全廃条約(INF条約)の破棄を明言し、核開発でも時代を巻き戻してしまった。中国やロシアに対する厳しい対応は、西側諸国にも一定の支持を集める一方で、超大国同士の対立を鮮明にし、シリア内戦におけるロシアやイラン、トルコの接近を招き、北朝鮮と中国、ロシアとの接近も懸念されている。
 
順調に見える世界経済も、2008年9月のリーマンショック以来、世界的な金融緩和でパイを大きくしてきただけで、各国が経済成長に行き詰まりを見せる中、保護主義の傾向を際立たせ独裁体制が支持される土壌を育み、対立が鮮明になってきている。
 
「おかしな事件の数々は、根っこの部分でつながっている」
先日テレビで有識者が語っていた。平和の窓が小さくひび割れ、亀裂が少しずつ広がる過程で、独裁者が暴走し、利害国同士の権謀術数や離合集散でパワーゲームが繰り広げられている。
 
資本主義や民主主義に危機が迫っているという声もある。引き返せないパンドラの箱が開いてしまったかに見える世界の混乱。11月6日の中間選挙で米国の政治に変化が生じれば、世界にも大きな影響が及ぶ。
 
日本も10月24日から臨時国会が始まった。野党第一党の立憲民主党はモリカケ問題を再び追及するという。世界が激変する2年前から追及して何ら成果のない問題を、国際社会の現状を無視して追及するという政治的な感性に驚きと失望を禁じ得ない。