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【論説】逮捕や行方不明相次ぐ中国の恐怖政治

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最近、中国の闇を伝えるニュースが急増している。
 
7月に習近平国家主席の肖像画に墨汁を吹き付けた動画をツイッター配信した上海の女性(29)が、公安当局とみられる人々に押し掛けられたところまで動画撮影された後で消息不明となった。
 
9月に入ると、電子商取引大手「アリババ・グループ」の創業者、馬雲=ジャック・マー(54)会長が1年後の引退を表明した。理由は教育分野を中心とした慈善事業に専念するため。自らの引退は終わりではなく、「一つの時代の始まりだ」と述べた。
 
同月25日には、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉(モウ・コウイ)総裁(64)が中国帰国便の搭乗後に行方不明となり、今月に入って中国国家監察委員会が収賄容疑などで捜査していることが明らかになった。ICPOには10月7日、孟氏から辞表が届いたという。
 
国際機関の重要ポストを失うことは中国の国益を損なうはずだが、習近平国家主席にとって邪魔な人物を排除することの方が最優先であることを今回の拘束は示している。習氏が粛清に追い込んだ周永康氏を後ろ盾に出世した孟氏だが、周氏が拘束された2013年以降も出世街道を歩み続けた。このタイミングでの拘束には、ウイグル族弾圧や海南航空集団会長のフランスでの突然死が絡んでいるとの噂もある。
 
また、6月から行方不明になっていた人気女優の范氷氷(ファン・ビンビン)氏(37)も中国当局に3カ月間拘束された挙句、脱税などの罪で8億8300万元(約146億円)の罰金支払いを命じられた。
 
経済成長と共に、まるで資本主義・自由主義国の仲間入りをしたかのような中国だが、政治的な実体は共産主義国家の体質を何ら変えていない。むしろ、独裁体制の確立によって「トラもハエもたたく」と公言する習氏の締め付けは、党の枠を超え民族や影響力ある民間人に及んでいる。
 
一罰百戒による見せしめ逮捕とも考えられる一方、無名の人々は表に出ないまま膨大な数の粛清が行われている可能性もある。一体、裏で何が行われているのか。表に出る情報だけでは素顔の見えない国である。