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【論説】人類史に残る本庶氏のがん治療研究

京都大学のHPでもトップで紹介されている本庶佑氏の受賞

 
ノーベル医学・生理学賞に京都大学特別教授の本庶佑氏(76)が、米テキサス州立大のジェームズ・アリソン博士とともに選ばれた。免疫を抑制するタンパク質を発見し、がん免疫治療薬「オプジーボ」の開発につなげた功績が評価された。
 
オプジーボ(一般名:ニボルマブ)といえばここ数年、がん治療新薬として注目され、新聞や雑誌などで頻出してきたキーワードである。小野薬品工業が開発し、2014年9月に発売を開始。現在世界60か国で承認されている。
 
国内では当初、年間3500万円もかかることから、早期の薬価見直しが論議され、2017年2月に50%引き下げられた。2018年4月にさらに約20%引き下げられたため、当初100mg72万9849円だった薬価は現在、27万8029円となっている。
 
最近の開発薬と思っていたものが、迅速にノーベル賞に反映されるあたり、いかに画期的な研究であるかが伺える。人類は太古よりがん治療との闘いを繰り返してきたが、画期的な治療法はなかなか確立できなかった。
 
本庶氏らの研究は、がんへの直接的な攻撃ではなく、免疫を抑える働きを抑制し、免疫力を飛躍的に高める方法を解明したことが、それまでの治療法と異なる。現在は皮膚がんや肺がん、胃がんなどの治療にとどまるが、今後は全てのがんを対象にした標準的な治療法になると期待されており、将来的には数千万、数億という人々の余命を延長させる可能性もある。ただ、副作用などの経過観察が不十分で、課題も少なくない。
 
本庶氏らは、12月10日にストックホルムで行われる授賞式で、賞金計900万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)を2人で分けることになる。その功績は金額換算できない人類史レベルのものと言えるが、本庶氏は賞金を大学に基金として寄付する意思を示している。