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【論説】総裁候補は東京五輪後のビジョンを語って

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景気は政局にどれだけ影響するのか。アベノミクスには評価と酷評双方の意見があるが、第2次以降の安倍政権が経済最優先の政策を続けてきたことは2012、14、17年の衆院選と13、16年の参院選の選挙公約でいずれも最初のテーマに掲げたことからも明らかだ。
 
株価だけをみれば、発足時12年12月26日の日経平均終値1万230円から2018年6月1日終値2万2171円で、約1万2000円も上昇している。アメリカ大統領選挙の前に世界的に大きな調整期間はあったものの、全体的には右肩上がりで推移している。
 
1991年3月にバブルが崩壊し、2年後の1993年8月に55年体制も崩壊、非自民8党派による細川連立政権が誕生した。一方、世界的金融危機となったリーマン・ショックは2008年9月に発生し日経平均も同年10月28日に最安値6994円に下落(麻生政権時)。1年後の2009年9月16日、衆院選での大勝を受けて鳩山由紀夫内閣が発足。同日の株価終値1万271円は、民主党政権時代の3年余を通じてほとんど上回ることなく、11年3月11日に東日本大震災が発生すると同年3月15日に同党政権下での最安値8227円に。政権交代まで、1万円台の回復はほとんどなかった。
 
こうしてみると、災害や金融危機などにより経済が混乱すると、しばらくのタイムラグがあって政権交代などの大きな政局が訪れていることが分かる。
 
現在、東京オリンピック・パラリンピック後の日本経済に対して、多くの人が警鐘を鳴らしている。少子高齢化、年金財政の危機、財政危機、景気対策、地震対策、……財政健全化のために財政を切り詰めれば政府与党の人気は落ちる。課題の多い時代ほど政権運営というのは難しくなる。
 
そう考えると、2020年以降の政権運営は戦後最も難しい局面に突入すると予想できる。如何なる政策を打とうにも、副作用が生じるために政権は長続きしないかもしれない。経済もつまずき、政権も不安定になり、日本は国難のような危機に直面するかもしれない。
 
自民党総裁選では、金融緩和の出口論や地方創生、憲法改正のテーマに議論が集中しそうな気配だ。もしくは、サマータイムの導入や五輪競技の開始時間の話など。
 
しかし、最大の問題は東京五輪後の国家ビジョンである。暑い中で行われる熱い競技の終幕後、日本が燃え尽き症候群になって国内外から売り叩かれないか。少なくとも、その後の日本を積極的に“買う”材料がなければ、1960年代から長期で経済停滞したイギリス病のように、日本病と呼ばれる長期低迷が始まる可能性が高いのではないだろうか。
 
日本には、人口減少や財政悪化など負の側面を弾き飛ばすほどの技術力や教育水準の高さ、良識ある国民性といった強みがある。それらを最大限に引き出し、“クール”ジャパンと賞賛されるような魅力に満ちた大きなビジョンを、総裁候補の2人には語ってほしい。