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【論説】来季は14球団?プロ野球の広告効果に注目するIT企業

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11月から始まるプロ野球のストーブリーグは、ペナントレース以上の盛り上がりを見せるかもしれない。
 
今や話題性では飛ぶ鳥を落とす勢いのアパレル通販サイト『ZOZOTOWN』を運営する株式会社スタートトゥデイ(10月1日から株式会社ZOZOに変更)の前澤友作社長が球団経営に名乗りを挙げたのは7月17日のツイッターだった。内容を下記に転載する。
 
【大きな願望】プロ野球球団を持ちたいです。球団経営を通して、ファンや選手や地域の皆さまの笑顔を増やしたい。みんなで作り上げる参加型の野球球団にしたい。シーズンオフ後に球界へ提案するためのプランを作ります。皆さまの意見も参考にさせてください。そこから一緒に作りましょう! #ZOZO球団
 
この動き、「いつかどこかで」という既視感がある。2004年、ライブドア社長だった堀江貴文氏(45)が、世間に名を知られるきっかけになった球団買収計画だ。経営難から近鉄がオリックスと合併するという話が浮上すると、堀江氏が「買収したい」と宣言。すると、検索・ブログサイトとして競合していた楽天も手を挙げた。結局、近鉄はオリックスと合併したが、空いたパ・リーグの6球団目に同年11月、楽天の新規参入が認められた。
 
さらに、本業で失速したダイエーは同月、ソフトバンクに球団を身売りした。2011年にはTBSが保有していた横浜ベイスターズ株をディー・エヌ・エー(DeNA)に譲渡し「横浜DeNAベイスターズ」が誕生。
 
インターネット普及前には、巨人戦を中心にほぼ毎試合テレビ放映されていたプロ野球だが、ネット社会に入って映像や娯楽の多様化により人気は急低下し、かつてのように視聴率が取れなくなった。放映権で潤っていたセ・リーグの各球団も軒並み赤字に転落した。
 
斜陽コンテンツとみられたプロ野球に身売り話が持ち上がるのは時代の流れとも受け止められた。ところが、よもやのITベンチャーによる「俺が俺が」で活性化し、日本を代表するオーナー企業の新旧交代を印象付けた。経営の交代と2004年の日本ハムファイターズの北海道へのホーム移転などにより、各球団は経営見直しに本格着手し、地元住民に愛される仕掛けづくりに乗り出す。
 
その結果、セ・パ両リーグとも球団経営は改善に向かった。球団単体の収支に限らず、オーナー企業の広告効果や信用度などのイメージアップは計り知れない。新聞やネットの運動面には毎日、試合結果として企業名が記され、社員の労働意欲にも効果が期待できる。
 
楽天は新規参入ということで、ホームの宮城球場を90億円で改修したが、球団買収の費用はかからなかった。改修工事により、楽天は使用権と営業権を取得しており、その後の年間費用も極めて低く抑えられている。
 
ソフトバンクはダイエーが保有する球団株を50億円で、チケット販売などの興行権を150億円で買収した。その後、ヤフードームを870億円で買収しており、楽天に比べるとはるかに経費を掛けている。同社は球団買収から1年後の2006年3月、英ボーダフォン日本法人を買収し、3大携帯キャリアの1つとして企業規模を拡大させていった。球団経営が携帯利用者の獲得に貢献するシナジー効果を生み出している。
 
DeNAは球団株を65億円でTBSから取得。横浜スタジアムの運営会社を74億円で買収し、周辺に商業施設を併設するボールパーク構想を進めている。イベントやPR事業により地元住民が次第に「自分たちの球団」という認識を強め、ファンや入場者数も上昇傾向にある。横浜や北海道、広島など各球団は、サッカーJリーグを参考にしながら、球団経営を地元密着型のビジネスとして確立させつつあるのだ。
 
楽天はプロ野球の成功に味を占めたのか、J1ヴィッセル神戸の助っ人としてFCバルセロナに所属していたイニエスタと年俸32億5000万円で契約した。優勝する目的だけであれば、34歳の元スペイン代表をJリーグ史上最高額で招いたりはしなかっただろう。楽天はイニエスタだけでなく、FCバルセロナとも4年間で257億円のパートナー契約を結び、ユニホームに「RAKUTEN」の広告が入っている。それだけ東北楽天が企業の知名度やイメージアップに効果があったと実感しての大盤振る舞いと考えられる。成功体験を世界規模のスポーツ・サッカーに拡大させており、SNSやEC分野での大勝負に先んじてイメージ戦略を進めていると考えられる。
 
前澤氏のつぶやきによって、にわかに千葉ロッテマリーンズが身売りをするのではないかと噂されているが、ロッテは全否定している。日本野球機構(NPB)としては、勢いのある企業に参入してもらう方が全体が活気づくので、ありがたいだろう。身売りする球団がなければ、現在の12球団2リーグ制が14球団2リーグ制となる可能性もある。
 
15年前には想定されていなかったプロ野球の広告効果やイメージアップ。ITベンチャーから見れば、球団参入は東証一部上場にも似た“一流の証”なのかもしれない。