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【論説】思い込みだけで失言繰り返すトランプ大統領

プーチン大統領(手前左)との共同記者会見に臨むトランプ大統領(ホワイトハウスFBより引用)

 
トランプ米大統領の暴走が止まらない。人種や性別、趣味、世代間格差、収入格差……これだけ社会が多様化し、ダイバーシティという英語が普通に用いられる時代なのに、世界の重要な決定や傾向が、たった1人の極論を唱える人物に振り回されるシステムは非常に危険ではないかと、世界の多くの人々が懸念を抱いている。
 
トランプ氏は7月16日、米ロ首脳会談後の共同記者会見で、2016年の米大統領選でのロシア関与に関し、「ロシアが干渉する理由が見つからない」として、プーチン露大統領を信用する考えを述べた。これは、「選挙介入があった」と結論付けた米情報機関よりもプーチン氏を信用したことになる。
 
翌日に「情報機関の結論を受け入れる」と発言を修正し、前日の発言は言い間違えによるものだと苦しい釈明をしたが、トランプ氏は以前からロシアの選挙介入はなかったとする考えを述べている。今回は更に「ロシアが干渉する理由が見つからない」とも延べていたが、トランプ氏からすれば自身が勝利した大統領選にケチを付けられたくないという思いがあるのだろう。
 
当時、クリミア占領やシリアのアサド政権を支持するロシアに対し、西側諸国は共闘して批判。オバマ大統領と同じ米民主党のヒラリー・クリントン氏の政権が誕生すれば、ロシアにとって事態はより一層悪化する可能性があった。一方、プーチン氏を好意的に見ていたトランプ氏が誕生すればロシアの国益に寄与するのは誰が見ても明らかだった。客観的にみれば、干渉する理由は大いにあったのである。
 
強気でならすトランプ氏が今回、発言を撤回したのは11月の議会中間選挙を意識して、国内での批判が思いのほか強く、混乱を早期に収拾したいと考えたとみられる。
 
ところが、18日にも記者から「ロシアは今も米国を標的としているか」と尋ねられて「ノー」と即答した。これが再び、米情報機関の見解に反するとして批判が渦巻き、報道官が「質問には答えないという意味のノーだ」と釈明している。
 
保護貿易も、移民政策も、対北朝鮮政策も、トランプ氏は過去の歴史や総合的見地から学ばずに、自身の強い思い込みだけで判断し、立場が危うくなりそうなときだけ苦しい言い訳を繰り返す。
 
フェイクニュースを批判するトランプ氏自身が、誰よりもフェイクニュースを量産し続け、世界を混乱させているといえる。