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【論説】変化の時代に変われなかった財務事務次官

【論説】変化の時代に変われなかった財務事務次官

 
財務省の福田淳一事務次官がセクハラ疑惑を受けて辞任を表明した。セクハラやパワハラは、許されないご時世である。週刊新潮により公開された録音ファイルの声が本人であるならば、洒落や冗談の域を超えた非常識極まりない発言の数々である。
 
海外でも録音ファイルが“大活躍”している。暴言を吐く声が流された「ナッツ姫」の妹が、パワハラの動かぬ証拠を突き付けられ窮地に立たされている。その異常な奇声を耳にして、「このハゲー」と秘書を罵倒した元国会議員を思い出した人も少なくないだろう。彼女もまた、録音ファイルによって化けの皮を剥がされ、議員バッジを手放すことになった。
 
2000年代に入ってからのICレコーダーの技術は飛躍的に進化し、現在は2000時間以上録音できるレコーダーが1万円以内で購入できる。バッテリーとメモリーさえ確保できれば、3か月近く録音し続けることも可能なのである。
 
記者は抜け目がない。筆者が議員秘書の時、議員同士の非公開会合が行われる際、直前の取材を終えた記者が部屋の目立たぬ場所にレコーダーを偲ばせている光景を何度か目にした。「壁に耳あり障子に目あり」はいま「壁に録音あり障子に録画あり」と思っておいた方がいい。『李下に冠を正さず』の意識がないと、すぐに本性は暴かれる。先日見たテレビで、ある芸能人が「俺たちの若い時代はセクハラやパワハラしかなかった」と振り返っていたが、時代の価値観は常に変化を続けている。変化や進化に対応できない者は、時代のあだ花に終わる。