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北朝鮮内の同胞向けラジオ「しおかぜ」中波放送、今年度中の再開メド立たず
特定失踪者問題調査会(荒木和博代表)が運営する北朝鮮向けラジオ放送「しおかぜ」の中波放送が、資金難により停波状態になっている問題で、加藤勝信拉致担当大臣は、平成29年度中に中波放送を再開させるための予算確保を行う考えがないことを明らかにした。
しおかぜ中波放送を巡っては、菅義偉官房長官が、5日の会見で、平成30年度予算案における中波放送にかかる業務委託費の増額要求について言及していた。
加藤大臣は、9日午前に行われた会見で、しおかぜ中波放送再開について、次のように述べた。
「我々がもらっている予算の中から、既に調査会とは業務委託契約をして、それにかかるお金は支払われた。こういう状況だ。
いずれにしても、『支障のないように、政府として責任を持って取り組みたい』と官房長官は会見で仰った。我々もそういう姿勢で取り組んでいきたい」
しおかぜの中波放送は、近年、北朝鮮内で、短波受信用ラジオの入手が困難になり、中波ラジオ受信機(AM)の普及率が高まっていることを受けて、平成28年10月から12月、平成29年4月から9月と断続的に運用されてきた。
しおかぜ中波放送は、朝鮮半島有事の際、北朝鮮内に囚われている全ての日本人への情報提供への貢献が期待されているが、朝鮮半島情勢が悪化している現在、肝心な時に停波状態になっている原因は、中波放送運用にかかる多大なコスト負担だ。短波放送の場合にかかる費用は、1日2時間半の放送で、月額110万円、中波放送の場合、1日1時間の放送で、月額200万円となっている。
特定失踪者関係者によると、政府予算からの業務委託金の支払いのタイムラグを含めて、特定失踪者問題調査会の資金繰りは自転車操業状態となっており、中波放送の継続を断念せざるを得ない状況だったという。
加藤大臣の発言からは、拉致被害者をはじめとした、北朝鮮内に囚われている全ての日本人の生命を守るための情報提供への思いは感じられなかった。「支障のないように、政府として責任を持って取り組む」のであれば、朝鮮半島情勢が悪化している今こそ中波放送の運用を再開させるべきではないのか。日本政府の本気度が問われている。