contribution寄稿・コラム

【新春寄稿・西村真悟】明治の精神を以て国難を克服すべし(1)

【新春寄稿】

明治の精神を以て国難を克服すべし(1)

西村真悟

nishimura

 

 

 昔の人は正月元旦を迎えると、新年を迎えると同時に、一つ歳をとると思った。つまり元旦は年の初日であり、国民の新しい年齢の初日なのであった。この意識を念頭において、大東亜戦争の敗戦後に初めて迎えた元旦である昭和二十一年一月一日に発せられた昭和天皇の「年頭、国運振興の詔書」を拝すれば、また感慨新たなるものがある。この詔書は、戦後、天皇の「人間宣言」というレッテルを貼られてその内容を封印されてきた。しかし、天皇が人間であることは、遙か太古の昔から当然のことである。此の詔書は「人間宣言」ではなく「戦後の志の宣言」なのだ。

 一昨年来、さかんに戦後七十年とか七十一年とか言われ、その度にパブロフの犬のように近隣の二国は我が国に反省と謝罪を求めてきた。しかし、真に我が国家と国民が、戦後を振りかえらんとするならば、すべからく、敗戦後の最初の元旦に発せられた昭和天皇の「年頭、国運振興の詔書」の志を常に拳々服膺すべきなのだ。

 この詔書で昭和天皇は、冒頭に、明治天皇が明治の初めに国是として下された「五箇条の御誓文」を指し示された上で、「叡旨公明正大、又何ヲカ加ヘン。朕ハ茲ニ誓ヲ新ニシテ国運ヲヒラカント欲ス」と宣言され、国民に「五箇条の御誓文」の叡旨に基づいて「新日本ヲ建設スベシ」と命じられ、さらに、「夫レ家ヲ愛スル心ト国ヲ愛スル心トハ我国ニ於テ特ニ熱烈ナルヲ見ル。今ヤ實ニ此ノ心ヲ拡充シ、人類愛ノ完成ニ向ヒ、献身的努力ヲ効スベキノ秋ナリ」と国民を励まされた。そして、末尾を、「一年ノ計ハ年頭ニ在リ、朕ハ朕ノ信頼スル国民ガ朕ト其ノ心ヲ一ニシテ、自ラ奮ヒ、自ラ励マシ、以テ此ノ大業ヲ成就センコトヲ庶幾フ」と結ばれたのである。ここには、自虐史観のかけらもなく、「明治維新の志」を「戦後の志」とする昭和天皇のみずみずしい心意気が示されている。即ち、此の詔書によって、戦前と戦後さらに明治維新と現在の連続性が確保されたのである。

 そこで、戦後七十年を越えた現在の我が国を取り巻く内外の情勢を見渡せば、もはや戦後の世界秩序は崩壊し、東アジアの情勢は、アメリカの後退と中共の暴力的台頭の中で既に「戦前」であり、明治に遭遇した国難である日清・日露の両戦役前夜の状況に迫りつつあると言わざるを得ない。既にロシアは北の我が国の領土に軍事基地を建設し、中共は南の我が国の尖閣を奪わんとし、我が国の生命線であるシーレーンを扼しようとしている。よって我らは、明治の先人が明治の志によって勇戦奮闘してこの日清・日露の両国難を克服したように、再び、明治の志と精神を甦らせてこの国難に立ち向かわねばならない。即ち、我らは、国家の生き残りを懸けて、既に昭和天皇が示された「年頭、国運振興の詔書」の誇り高い明治の精神によって、元寇に打ち勝ったように、我が国家を守らねばならない。