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【論説】大塚家具、誰がやっても負け戦だったビジネスモデル

創業の地である春日部市で、今年5月に閉鎖された大塚家具ショールーム(グーグルマップより)

 
経営不振の大塚家具が、いよいよ危機的状況に陥っている。2018年12月期決算では3期連続の赤字を計上する見通しで、現預金も10億円程度と報じられている。売り上げ減少に歯止めがかからない中、身売り先を見つけるのも困難のようだ。
 
有力候補と報道されたヨドバシカメラは「メリットがない」として否定しており、大株主の貸会議室大手ティーケーピー(TKP)や、台湾の企業グループ「能率集団」の名前も挙がっているが、再建の道のりは容易ではない。
 
大塚家具といえば、経営権を巡って争った「お家騒動」が記憶に新しい。2009年3月に創業者の大塚勝久氏から社長を引き継いだ久美子社氏は、敷居の高い高級家具の店からカジュアルに入店できる方針に転換。リーズナブルな価格帯の家具を据えて、中所得層でも購入しやすい業態にした。顧客名簿は用いず、接客も積極的声掛けから、ニーズに応じて説明するスタイルにすることで、気軽にウィンドウショッピングをしたい若年層にも配慮した。
 
業績は一時的に改善したものの、ニトリやイケアの台頭で家具専門店に訪れる顧客は減少を続け、2014年7月、再び勝久氏が社長に復帰したが、業績悪化は止まらず営業赤字に転落。2015年1月の取締役会で再び久美子氏が社長に復帰すると、勝久氏は株主総会で自身を中心とした取締役の選任を求めて株主提案。久美子氏らの取締役会は勝久氏を取締役から外す逆提案を決定した。
 
株主総会は、大株主である一族の委任状争奪戦となり、久美子氏率いる会社側の勝利となる。勝久氏は資産管理会社の株式を巡って民事訴訟を提起し、父娘の争いは法廷に持ち込まれる泥沼の事態に。一方で、退任した勝久氏は長男と共に「匠大塚」を起ち上げ、2016年6月、大塚家具の創業地である春日部に本店をオープンさせた。
 
今回の身売り報道で、勝久氏の考え方が正しかったという批評もあるが、匠大塚も業績は決して良くないようだ。昨年、最側近の2人が相次ぎ辞任し、同9月には春日部店の土地を担保に金融機関から15億円の融資を受けたと報じられている。
 
結局、お家騒動はどちらが勝利しても、勝者が敗者になっていただけのことで、家具だけを卸販売して稼げる時代ではなくなったということだ。家具が高級品であろうと廉価品であろうと、雑貨やインテリアを含めて製造から販売まで行っているニトリやイケアには適わない。
 
アマゾンに代表される流通革命は、全ての小売業を安売り競争に引きずり込んだ。その中で、ありとあらゆる工夫で活路を見出そうともがいている。
 
例えば家電量販店は10%、20%ものポイント付与で顧客を放さない。他店のチラシを持参すれば、それよりも安くする。テレビ通販で伸長したジャパネットたかたはメーカーと提携したオリジナル商品でオンリーワンのヒット商品を生み出し、業績は右肩上がりだ。ドンキホーテもプライベートブランド(PB)商品で他社の追随を許さない安価な家電を開発している。
 
店舗型の小売店は、安さも簡易さもアマゾンには適わない。それ以外の競合しない部分で一定の支持を得ながら、この“戦国乱世”をどうにか生き延びているのだ。
 
久美子社長も、独自のモールサイトやポイント制、異業種とのコラボなど、挑戦的な試みをしたものの、どれも小粒なままに終わってしまった。そもそも価格競争の面からいって、自社製造しない流通業のみで勝ち残れる時代ではない。経営に余裕のある段階で有力な製造業者と経営統合し、オリジナル商品を開発する道を模索できなかったのだろうか。
 
富裕層をターゲットにしている匠大塚も「連絡があれば相談に乗る」などと余裕を見せてばかりはいられまい。店で使い心地を確認しネットで購入する購買行動は、中低所得層だけの特権ではないからだ。数年後に親が子と同じ轍を踏まなければいいがと、他人事ながら心配になる。