2017年09月22日(金曜日)
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タジカラオの独り言 第四回 「国想う旅の一座」 演出家・映画監督 野伏 翔

    芸術活動とは言えないが、このところ振り込め詐欺や暴力団排除のための寸劇を毎日のように都内各所で上演している。この仕事は東京都公安委員会から劇団夜想会が依頼を受けたもので、地元警察署の防犯課や公安の職員の報告に続き、私たちの寸劇を披露している。振り込め詐欺なら犯人役と被害者役、暴対法も暴力団員対一般市民の構図で、できるだけ具体的な犯罪事例を紹介しつつも、笑いの多いコント風の作りにしている。会場は東京芸術劇場や北とぴあと言った一流の劇場から、小学校の講堂や果ては警察署の柔道場までピンからキリまであり、毎回違う場所での公演である。若い役者の訓練にはこんな良い経験もないが、演出は会場の違いによる役者の導線や照明の手直しがあるため、結構手間がかかる。この仕事が年間で百ステージ近くある。どうしてこんなに仕事が多いのかと言えば、それは詐欺の被害が一向に減らないからである。詐欺による今年の被害総額は、この十月時点ですでに六十億円を超えているそうである。その手段は巧妙化する一方で、息子を名乗るオレオレ詐欺から、還付金詐欺、数々の投資話、架空請求、税金の払い戻し、マイナンバーなどの時事ネタ、等等際限がない。犯人は百パーセント暴力団員か、その下部組織のチンピラグループ。年齢はボスが30歳前後、かけ子と呼ばれる電話をかける役が25~6歳、受け子と言うお金を取りに行く係がハイティーンから20歳くらい、と言った馬鹿馬鹿しいほどの若さである。幹部たちは建前上「素人さんは騙さねえ」と、一丁前の任侠を気取るが、下っ端は上納金がきついので何といっても一番儲かる詐欺に群がっているそうだ。一日の売り上げ目標は200万円が相場、百人二百人と片っ端から当たっているうちには、必ず一人は引っかかるそうである。元刑事の公安の職員さんも含めて、役者たちと毎日のように都内を回っていると、旅芸人の一座のような一体感が生まれる。寸劇が受けて笑いが出ると「受けた受けた」と職員さんが一番喜んでいるが、いくら芝居が受けても詐欺が減らなければ意味がない。

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