2017年12月18日(月曜日)
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書評 フィリピン 井出穣治著 中公新書 三浦小太郎(評論家)


書評 フィリピン 井出穣治著 中公新書

三浦小太郎(評論家)

 

 ドゥテルテ大統領登場後、南シナ海における中国の覇権主義膨張との関連から、フィリピンに対する注目は日本でも高まっている。しかし、時にしてその論点はよかれあしかれ個性的な大統領の政治手法、対米・対中関係、麻薬犯罪とそれへの取り締まり方法の是非など、ごく最近の事例に留まることがしばしばだ。本書はフィリピンの戦後史と政治、経済について、最低限抑えておくべき情報や知識を的確に提示してくれる一冊として、ぜひおすすめしたい一冊である。

 まず、フィリピンが人口一億人を超え、その平均年齢は25歳という、極めて若く、発展の可能性が高い国であること、かっては「アジアの病人」と言われるほど経済・政治共に混迷を極めてきたが、現在は高度成長国として「アジアの希望」になりつつあることを指摘する。この変貌はまず第一に、2000年代のアロヨ政権と、それに続くベニグノ・アキノ政権下による財政の健全化であった。もちろん、これは政治的安定無くしてなし得なかったことであり、この時期のフィリピンにおける財政改革や、国内のモロ解放戦線との和平の意義などを本書はわかりやすく説明していくれている。ドゥテルテ政権は、経済面においてはアキノ路線をほぼ継承しており、閣僚人事においても経済政策に精通する大臣を要所に配置している。特に強調されているのは税制改革とインフラ投資であり、個人所得税、法人税を引き下げ、ガソリン税、付加価値税を引き上げることでGDPの訳2%に当たる3000億ペソの税収増加を目指し、また、これまでの政権ではスピードが遅かったインフラ投資を、官民パートナーシップの形で迅速に大型投資を実現しようとしている。もちろん、この政策が全面的に正しいかどうかには意見もあり、特に後者は利権問題も絡むが、少なくともフィリピン国民には、強い政権のリーダーシップで経済政策が進んでることは、現在のところ好意的に受け入れられている。

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